■理事長ご挨拶

RATO理事長 金川哲夫
RATO理事長 金川哲夫

 今世紀に入ってから日本の製造業は危機状態に有ります。中国、韓国、台湾などの経済成長に比べて日本は不振が続いています。半導体、パソコン、液晶パネル、携帯電話などいずれも苦しい状況にあります。かつては世界を席巻した「メイド・イン・ジャパン」のブランドは、現在日本の国内でしか通用しないローカルなブランドに変わっています。
 このような状況を招いた要因はいろいろ有りますが、企業が制御しがたい要因として国の政策や円高があります。一方、企業が統制できる要因もあります。一つは技術流出を防ぐ方策と、もう一つは1企業が一貫して開発・企業化し世界を相手にしてきた考え方で、21世紀の現代では通用しなくなったことにあります。

 このような窮迫した状況を切り抜けた実例が16世紀・戦国時代の日本で行われた「毛利元就の3本の矢の教え」ではないかと思います。実際に毛利家は19世紀末廃藩置県までの300年にわたって中国地方の雄藩として存続しました。この教えは、個々の企業単独では押し潰される相手に対しても、個々の企業がお互いを信じて手を結べば世界を相手に戦えると謂うことです。つまり有機太陽電池はDSCにせよOPVにせよ、1企業でもって開発・企業化するのではなく、最初からオールジャパンの体制で智恵を集め世界を相手にするのが堅実な方針で将来的にメリットが生じると思います。「言うは易く行うは難し」と言いますが、オールジャパン体制を実現するにはまず知財の壁が立ちはだかって来るのが目に見えています。ここで知恵を絞り「小異を捨てて大同団結」しなければ有機太陽電池の将来に明かりは見えてこないと思います。

 更に有機太陽電池を世の中に普及させるためには少なくとも変換効率がモジュールで10%以上・耐久年数10年は保たないと商品にならないと思います。セルでは10%を超えていますがモジューになると未だ10%を超えていません。商品化迄にはもう一つ二つ大きなブレークスルーが必用です。性能向上の方はFIRSTで頑張って頂き、ここ2,3年の内に商品化の目途が立ち再生可能エネルギーとしてカウントされる存在にならないと有機太陽電池まで中国・韓国の後塵を被ることになり兼ねません。
 将来的には世界が真似のできないかつ市場で価格競争に巻き込まれない独自の品質を持った有機太陽電池を育て上げる予定です。今後ともRATOにご支援を賜りますようお願い致します。