有機系太陽電池技術研究組合(RATO) 発足記念シンポジウム

会場風景(東大先端研ENEOSホール)
会場風景(東大先端研ENEOSホール)

 2012年6月19日(火)東京大学先端科学技術研究センター環境エネルギー研究棟ENEOSホールにて、有機系太陽電池技術研究組合(RATO)発足記念シンポジウムを開催した。今回のシンポジウムには産官学の55機関から115名の参加があった。
 開会にあたり、金川哲夫RATO理事長より、「日本が世界に先駆けて有機系太陽電池の商品開発を加速するためには、RATOの役割が重要であり、多くの組合員の協力が必要である」と挨拶があった。次に経済産業省資源エネルギー庁元長官の石田徹様より、「太陽光発電の普及拡大に向けて、新しい分野として有機系太陽電池の早期実用化を期待している」と祝辞が述べられた。
 続いて基調講演にうつり、太陽光発電技術研究組合(PVTEC)桑野幸徳理事長、および、産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センター近藤道雄センター長からご講演があった。最後に東京大学先端科学技術研究センター教授の瀬川浩司RATO理事から、有機系太陽電池の現状とRATO設立の意義や役割、今後の取り組みなどについての紹介があった。閉会後、希望者による色素増感太陽電池のミニパイロットライン(環境エネルギー研究棟瀬川研究室内)の見学会が行われ、その後意見交換会が開催された。

【基調講演1】太陽電池開発170年の歴史とその将来展望

太陽光発電技術研究組合(PVTEC)理事長 桑野幸徳氏

桑野幸徳理事長
桑野幸徳理事長

 桑野氏は、三洋電機株式会社に入社後、集積型アモルファスシリコン太陽電池で初めての事業化に貢献された。その後、三洋電機代表取締役社長に就任され、退任後の現在は太陽光発電技術研究組合(PVTEC)理事長に就かれている。
 基調講演では、太陽電池のルーツとして光電力効果発見の話に始まり、国内外の太陽電池産業の現状と展望に至る幅広い話題をわかり易く説明された。太陽光発電システム価格の推移、買い取り制度の比較、急増している太陽電池生産量の推移、累積太陽電池設置容量などを示され、太陽光発電の将来への期待について述べられた。さらにご自身が従事された集積型アモルファスシリコン太陽電池の実用化に関してご紹介がった。そのなかで、アモルファスシリコン太陽電池と有機系太陽電池との類似点について触れ、今後の有機系太陽電池の発展に向けて有意義なコメントを頂いた。最後に、将来のエネルギーシステム展望として、スマートグリッドやHEMS(Home Energy Management System)への期待、エネルギーハーベスト(環境発電)論の重要性、GENESIS(Global Energy Network Equipped with Solar cells and International Superconductor grids)計画の実現に向けた取り組みについて述べられた。

【基調講演2】太陽光発電産業の未来を探る

産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター センター長 近藤道雄氏

近藤道雄センター長
近藤道雄センター長

 近藤センター長からは、太陽電池産業界の現状や抱えている課題を中心に御講演いただいた。太陽電池産業のシナリオがこれまでと変化してきていることが指摘され、今後は各種太陽電池がそれぞれの特徴を生かした用途開発へ同時進行で取り組む多元モデルへの転換時期にあることが述べられた。また、シリコン系太陽電池の輸出量が減少している点を指摘し、将来的には海外での生産が増加し国内太陽電池産業の空洞化が懸念されると述べられた。
 太陽光発電の普及拡大を加速させるためにも、発電コストの低減が重要であると述べられた。そのなかで、1ドル/W(2020年)を目指す米国のSUNSHOT計画について言及された。さらに資源戦略とエネルギー戦略として各種太陽電池のEPT(Energy payback time)や太陽電池製造コストに対する構成部材などのコスト比率を示しつつ、有機系太陽電池についてはガラスフリーかつ効率10%などの条件が整えば、29円/Wを達成できる可能性があることが示された。また、LCOE(Levelized cost of Electricity)の計算では、初期コストを低くすることで他の太陽電池に対し優位性があると述べられた。最後に、信頼性試験やルール(規格)作りの課題を示し、多くのデータやノウハウの収集のためには組合参画企業間の協力が重要であるというコメントを頂いた。

【報告】有機系太陽電池技術研究組合(RATO)の取り組み

東京大学先端科学技術研究センター 瀬川浩司教授

瀬川浩司教授
瀬川浩司教授

 続いて瀬川教授から、有機系太陽電池の現状とRATO設立の目的や活動内容について紹介があった。はじめに、国内の太陽光発電導入目標と、そのなかで有機系太陽電池が期待される市場について述べられた。続いて有機系太陽電池のひとつである色素増感太陽電池の動作機構や作製方法、また、有機系太陽電池がもつ太陽電池特性(温度依存性、入射角依存性、光強度依存性など)を紹介し、次世代太陽電池としての優位性について話が及んだ。さらに、カラフル・フレキシブルなど有機系太陽電池の特徴を活かした用途について紹介があった。最後にRATOの組織や分科会活動内容などの取り組みについての詳細な説明があった。

パイロットライン見学会

 シンポジウム終了後、東京大学先端科学技術研究センター瀬川研究室において、色素増感太陽電池のパイロットライン見学会が行われた。実用化に向けたフィールド試験を産官と連携して進めるために、多くの太陽電池を安定して作製する必要があることなどが説明された。製造装置は温湿度制御が可能な実験室内に設置されており、10 cm角セルが連続して作製される様子を見学することができた。特に集電線や酸化チタン積層膜を精度良く形成するための全自動スクリーン印刷機や、対極基板上に電解液を滴下し光電極を重ね合わせてセル化を行うための真空張り合わせ装置について、詳細な説明が行われた。

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色素増感太陽電池製造装置見学の様子
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パイロットラインで試作した10cm角セル

意見交換会

パイロットライン見学会終了後、意見交換会が行われ、約80名が参加した。金川理事長の挨拶の後、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)和坂貞雄理事から祝辞および乾杯のご挨拶をいただいた。参加者間で活発な議論がおこなわれるなか、(株)資源総合システム一木修社長ならびにRATO理事であり大阪大学名誉教授の柳田祥三氏から挨拶をいただいた。最後に、瀬川教授が、パイロットライン見学会の時に作製した10 cm角セルの動作披露を行い、参加者に対して「是非良い材料を開発・提供していただき、さらなる高性能化を目指すことでRATOの活動が重要な存在意義を示す}と閉会の挨拶があった。

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意見交換会の様子
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一木修社長