太陽エネルギーの化学的変換貯蔵国際会議(IPS-19)報告

DSC・OPVの分子界面構造と電気伝導性に関する研究レポート
大阪大学名誉教授・RATO理事 柳田 祥三

IPS-19会議
IPS-19会議

IPS-19会議は、太陽光とCO2とH2Oからメタノール等の燃料を合成する研究を継続しているカリホルニア工科大学(CALTEC)のMichael Hoffmann教授が組織委員長となり、本年7月30日から5日間、CALTECで開催された。色素増感太陽電池(DSC)、ポリマー太陽電池(OPV)関係のプレナリー講演は、Michael Graetzel (Water splitting & DSC)、Andrea Hagfeldt (DSC)、Alan J. Heeger (OPV),Tobin Marks (Photoactive materials) 、Prachant Kamat (Q-dot PV)による5件、口頭発表も全セッションの約1/4、11セッションで75件であった。ポスター発表件数は全ポスター発表件数の約半数の142件あり、会議の後半Beckman Auditorium前の屋外広場で行われた(写真)。DSC・OPVの今後の研究・開発に寄与すると思われる分子界面構造と電気伝導性に関する5件の研究を報告する。

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1)”Organic PV”でのHeeger博士の講演では、OPVにおけるドナー分子(色素)がPC70BMの存在で相分離し、両分子がカラム構造を形成すること、さらに、界面の電荷移動はフェムト秒と励起子(エネルギー)移動よりも格段に早いことを指摘、エネルギー(励起子)移動過程の界面での失活の抑制の重要性を論じた。さらに、高純度の低分子ドナー色素DTS(PTTh2)2をPC70BMと組み合わせたOPVで変換効率6.7%(現在は7%以上達成)を報告した。注目されたのは、添加分子diiodooctane(DIC)を0.25%加えることで変換効率の向上に成功したこと、DIC添加による低分子ドナー色素の結晶モルフォロジーへの効果と電荷移動速度への影響である。さらに、低分子ドナー色素DTS(PTTh2)2に含まれる未反応分子由来のimpurity(図1)が1%存在すると形状因子(FF)が低下して、変換効率を6.7%から3.0%と半減させると報告した。

図2
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2)”Inorganic and Organic/Plastic Photovolatics”と題してMarks博士は、過去3年間のOLEDとOPVの両分野の研究成果に基づき、電子活性分子のπ-face stacking構造の重要性を論じた。OPVの構築において、アノードITO界面のinterfacial layer (TFL)のPEDOT/PSS層に替えて、ITOに反応するTPDSi2とTFBとの混合層(図2)導入、ナノ膜厚NiO層導入、さらに、graphene oxide層導入による効率向上を報告した。特に、rr-P3HT層のNiO層111面へπ-face-on 成長することを、Grazing incidence x-ray scattering (GIWAXS, GISAXS) 解析し、FFの増大に寄与することを示した。さらに、側鎖アルキル基を有する高分子ドナー色素7種PTB1~7におけるthienothiophene間のπ-π stacking距離をGISAXS解析で求め、その距離に反比例してFFの向上する関係を論じた(図3)。さらに、naphthodithiopheneを中心に持つ低分子ドナー色素NDT(TDPP)2とz-NDT(TDPP)2を合成し(図4)、mobility μの大きなz-NDT(TDPP)2を用いたPC60BMとのOPVにおいて、変換効率4.7%の達成を報告した。さらに、π-π stackingを最大限に調整した高分子ドナー色素とPC70BMによるOPVで、single junction OPVとして9.1%の世界記録を報告した。

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3)“Computational Interpretation and Prediction of Molecular Structures in Dye-sensitization Processes, Dye-sensitized & Polymer Solar Cells”と題する筆者らの研究では、DFT計算で求めたI5-N(Me)4+のV字構造が、X-線結晶構造とほぼ一致することを示し(図5)、I5-N(Me)4+の優れた電気伝導性に関して、DFT計算で求められる電子密度とエネルギー構造からのシミュレーションの妥当性を論じた。イオン液体系のポリヨウ化物電解質の電気伝導性が、近接I5-イオン種のHOMO/LUMO相互作用によるV字構造の垂直方向stacking由来の分子軌道関与の電気伝導プロセスを論じた(図6)。同じく、OPVにおけるrr-P3HTの電気伝導性も、rr-hexamer-3HT分子をモデルとしたDFT計算から、均一に広がるHOMO/LUMO相互に基づく-face 面での鎖状thiophene環の stackingと分子軌道を通じた電気伝導性のメカニズムを示した(図7)。さらに、rr-trimer-3HTとC60分子のHOMO/LUMO相互作用に基づくreorganization 構造をDFT計算し、側鎖ヘキシルグループがC60との界面におけるreorganization structureと界面軌道エネルギー準位に寄与することを示した(図8)。

4)”Computational Interpretation and Prediction of Molecular Structures in Dye-sensitization Processes. Effect of 4-tert-Burylpyridine (TBP)” と題する研究では、I5-が存在しないアセトニトリル溶媒電解質での優れたDSC特性、すなわち、高いVocの維持に関して、TBPのI3-、I-、さらにIラジカルへのTBPの非結合相互作用を分子シミュレーションし、ヨウ化物イオン種のTBPとのreorganization structureにおける分子軌道の電気伝導性への寄与を論じた。

図1

5)”Highly Stable Transparent PEDOT Film for Pt-Free Dye-sensitized Solar Cells”と題する日本ケミコンの町田健治博士の研究では、EDOTを独自の重合プロセスによって、高度に配向したPEDOT薄膜を、Ti foilやITO膜上に調製可能なこと。その-面でスタックしたと思われるPEDOT薄膜は、単独で高い導電率300 Scm-1を与え、透過率80-90%、中性で疎水性、耐湿性、耐熱性でPEDOT/PSSに優れること、ヨウ化物イオンに対するCV特性も、PEDOT/PSS よりも優れ、Ptに匹敵すると報告した(図9)。