活動報告(2012年9月~)

○臨時総会
日時:平成25年3月27日(水)
議題:1.平成25年度事業計画及び25年度収支予算
2.新入組合員の加入決議・承認
3.役員の選挙


○第6回理事会
日時:平成25年3月8日(金)
場所:東京大学先端科学技術研究センター13号館3階会議室
議題:–
1.平成25年度事業計画
2.25年度収支予算
3.新入組合員の加入承認
4.役員の選出


○第5回運営委員会
日時:平成25年3月8日(金)
場所:東京大学先端科学技術研究センター13号館3階会議室
議題:–
1.平成25年度事業計画
2.25年度収支予算
3.新入組合員の加入


○第5回技術委員会
日時:平成25年2月21日(木)
議題:1.平成25年度事業計画及び事業予算の策定

シンポジウム・講習会報告

○光化学応用講座
「光化学研究に必要な測定技術2012-電気化学計測と分光計測手法を中心に-」

日時:2012年10月16日(火)
会場:東京大学駒場リサーチキャンパスENEOSホール
概要:—–
光化学の研究に必要な計測技術をわかりやすく解説する講習会として、電気化学および光を使った計測技術の基礎と応用に関する講座が開催された。約50名が参加。講座プログラムは「赤外・ラマン分光法および時間分解分光法の基礎と応用」「電気化学計測法の基礎と応用」「光電子分光法の基礎と有機材料への応用」など。本講座は、RATOとの共催で実施。


○光化学討論会プレコンファレンス
「太陽エネルギーの利用拡大に向けた光化学の挑戦」

日時:2012年9月11日(火)
会場:東京工業大学大岡山キャンパス東工大蔵前会館くらまえホール
概要:—–
色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池などの次世代太陽電池開発や人工光合成研究などの光エネルギー変換の研究における最新の成果と将来展望について各分野の研究者による発表を行った。「太陽光の恵みを電気に換えて-進化する色素増感太陽電池」と題して、内田聡(東京大学教養学部特任教授)が講演した。

理事長退任に当たって 金川 哲夫 (RATO前理事長)

 

金川 哲夫 RATO前理事長

 
 平成22年6月第1回有機系太陽電池技術研究組合(RATO)設立準備会を開催してから既に3年が経ちました。神話に出てくる日本の国造りと同様なかなか固まらず、平成24年2月22日経産省から認可されるまでの道程が大変でした。
 しかし発足してからのRATOは、20年の歴史をお持ちの太陽光発電技術研究組合(PVTEC)を見習いながら緩やかではありますが前進を続けています。設立時の挨拶に「有機系太陽電池で日本が世界における存在感を示すためには技術面でも用途面でも常に先頭を走っている必要があり、その為にはオールジャパン体制が必要だ」と掲げたことをご記憶だと思います。オールジャパン体制が必要になるのはもう少し先のことであり、私の在任中には具体化しませんでしたが、設定した目標を反故にしないよう努力してきました。
 現時点での問題は、これなら市場の評価に耐えうるという有機系太陽電池が未だ世の中に出せないことです。色素増感太陽電池(DSC)に続き、有機薄膜太陽電池(OPV)でも変換効率が大巾に改善され実用化試験が始まりつつあります。DSCでは、昨年来有機無機ペロブスカイトなどの考案により変換効率と耐久性の改善が期待できるようになりました。更に面白いことに全く別の原理で作動するDSCとOPVですが、お互いに長所を取り入れ電池の構造や材料が接近してきたことです。
 従ってここ2、3年の内には、市場の評価に挑戦出来る有機系太陽電池は必ず姿を現すものと確信しています。しかし気を付けたいのは自社の技術を過信して独走し始めると、以前フラットパネルディスプレイや半導体などで遭遇したように海外のメーカーに足を掬われる可能性が高いと思います。
 ここで効果を発揮するのがオールジャパン体制です。 
RATOの各社が知恵を出し合って有機系太陽電池を永続性のある商品とするため、ハード面だけではなくシステム・サービス面を含め総合的な戦略戦術を検討し海外メーカーへの対抗手段を事前に講じておくことで優位性を維持すると共に低炭素社会に向けて貢献していきたいと考えています。
 競争の激しくなる将来に備え、来年傘寿になる私よりも若くて実績と行動力のある東レ相談役の田中千秋氏様に理事長を引き受けて頂いた次第です。私ももう暫く理事として頑張る所存ですのでご支援の程をお願いします。

寄稿-③ ”Angewandte Chemie”125周年記念シンポジウムに出席して —Roald Hoffmannの分子軌道概念と分子構造太陽電池—

Angewandte Chemie”125周年記念シンポジウム

 本シンポジウムは,「人類の社会・経済・文化に貢献した化学(Angewandte Chemie)」の過去・現在・未来への有機・無機化学,高分子・生物化学に関する魅力ある企画であった(右写真:吹奏楽演奏ではじまった満席の会場)。著名な15名の講演者の中で筆者が特に注目した方は,Roald Hoffmann博士である。
 同博士は,有機化合物・無機化合物の両方を研究対象とし、拡張ヒュッケル法の計算機化学を発展させ,有機化学反応の立体選択性を予測するウッドワード・ホフマン則を明らかにし, 44歳の時,化学反応過程の理論的研究(フロンティアー軌道理論)で,故福井謙一先生とノーベル化学賞を共同受賞された。同博士のweb siteには,詩人としてもいくつかの詩集を出し,科学的発見をテーマとする劇 “O2 Oxygen” を紹介している。そして,小生を驚愕させたのは,” THEORETICAL CHEMISTRY”「理論化学」と題する5行5節からなる詩であった。筆者は特に最後の5行の詩に感動した。

I hacked a rough piece of a new one through.
The other day I met a friend who’s run
into the same wild terrain. Starting out
from a hill nearby, he found a different
way. But I told you there was only one.

「理論化学の道は色々あろうが,行き着くところは分子軌道計算」(筆者の解釈)

 筆者は,電子輸送界面を形成する分子プロセスの理論的解釈に関心があり,RATOメンバーの瀬川浩司教授,内田聡教授,久保貴哉教授, FIRSTメンバーで計算科学を専門とされる山下晃一教授,三嶋謙二博士と意見を交換してきた。内田教授の紹介でHoffmann博士の1988年発刊の名著 ”Solids and Surfaces: A Chemist’s View of Bonding in Extended Structures”の原著を購入した。そして,分子間の相互作用への分子軌道概念に関する明解な記述を,THE FRONTIES ORBITAL PERSPECTIV(第15章フロンティアー軌道概念の展望)(p65)に見出した。筆者の解釈も込めてその基本概念を日本文で紹介する。
 「二つの分子間の相互作用は,最高占有分子軌道(HOMO)並びにその近辺の少数の軌道(e.g. HOMO(-1))と,最低非占有分子軌道(LUMO)ならびにその近辺の少数の軌道(e.g. LUMO(+1))の組,すなわちフロンティアー分子軌道群によって支配される。HOMO・LUMO軌道間の摂動(秩序への乱れ)により,分子間の相互作用(反応性)が決定される。HOMO・LUMO軌道の相互作用は,会合分子の化学的・物理的性質を制御・支配する潜在的能力をもつ。」

図1

 この偉大な理論化学概念を,現在FIRSTメンバーの萬関一広博士が以前見出していた増感色素Z907・アニリンテトラマー(EPAT)からなるハイブリッド色素増感TiO2太陽電池の界面分子構造の解析に試みた。
 EPATとZ907両分子の相互作用を,HOMO・LUMO相互作用を考慮した分子力場計算で最適化し,密度汎関数法でシミュレーションによりエネルギー的に平衡状態にある会合構造を求めた(図1)。 

 両分子間のven der Waals結合(2.970~3.290Å)に加えて,EPATのN-H結合上の水素原子とZ907のSCN基のS原子との結合距離2.511Åは,水素結合的Coulombic interactionであり, Z907とEPAT両分子が強く会合することが判明した,この分子間会合が,EPATからZ907への電子移動の進行に大きく寄与すると理論的に解釈した。

Hoffmann教授
Hoffmann教授

 この成果を論文として,Chem.Commun誌に投稿し終えた昨年12月上旬,本シンポジウムの案内が届き,1937年生まれのHoffmann博士が,最重要講演者の一人であることを知った。Hoffmann教授の講演は,「Protochemistries form a Bridge」と題するもので,化学者が登場する以前の古代から20世紀初頭までの化学物質,例えば,銀貨,顔料,染料,石けん等の物質とその製法プロセスの歴史を述べ,”Angewandte Chemie”の父としての最後を飾った。20世紀初頭合成インジゴが世界の染料化学を一変させたが,日本では依然と天然藍による染色技術が息づいていることを賞賛された。
 本シンポジウムは1200名近い参加者であったと,本シンポジウムの日本人講演者の北川進教授から拝聴した。本会場は休憩時間も混雑していた。小生は40分講演を終えられた直後の博士にいち早く近づき,やっとの思いで「軌道概念による理論化学」に感謝申し上げることができた。ハイブリッド分子太陽電池に関するChem.Commun誌掲載の論文をお渡しし(博士両抱えのファイルは論文別刷),

名著へのサイン
Hoffmann教授のサイン

光栄にも持参した名著へのサインを頂くことができた(d-軌道のスケッチに注目)。

 本シンポジウムでの講演の一部は,近着のAngewandte Chemie, 2013-52/10に掲載されている。Francois Diederichの ”125 Years of Chemistry in Angewadte Chemie”と題する講演は,”125 Years of Chemistry in the Mirror of “Angewadte Chemie”の題目で掲載されている。化学教育者には必読に値する。なお,同誌に掲載されているAlan J. Heegerグループの”Transferable Graphene Oxide by Stamping Nanotechnology: Electron-transport Layer for Efficient-Bulk-Heterojunction Solar Cells”と題する電子輸送が関わる論文は,RATO関係者に参考になろう。
 本シンポジウムの本年3月12日の出席はRATOの援助によるもので,ご高配に深謝する。

寄稿-② IEC TC113 ミルピタス会議(米国)に出席して

IEC TC113の会議は概ね年2回開催されているようである。2012年5月には東京で開催され、それに次いで同年10月に米国Milpitas(シリコンバレー)で開催された。10月といえばIECの年1回の総会の月である。2012年はノルウェーのオスロで総会が開催されたが、この際、TC113はこの全体の中では開催されず、別途米国にて開催する方を選んだようである。(因みに2013年のIEC総会は、同じく10月にインドのニューデリーで開催されるが、この時、TC113も一緒にニューデリーで開催される事が既に決まっている。)

 我等が有機系太陽電池がIECの中で討議される事になったのは、上述の2012年5月の東京での会議においてである。本稿では、この時からの経過を踏まえてMilpitas会議の内容を報告するとともに、この後、5月21日からのベルリン、10月のインドでの議論がどういうものになるだろうか・・・という想定を含めていきたい。ただお断りであるが、5月21日からのベルリンの会議に向けて、日々、状況が推移してきており、本稿は5月10日時点のものとして記載している事をご了解頂きたい。これが重要なのは、当プロジェクトへの参加表明をする国の数が規定に満たない場合は、その時点で当プロジェクトが消滅する事となり、“IECにおける有機系太陽電池の標準化活動そのものの行き場”が、当座無くなってしまう事を意味する。この可能性は極めて低いが、10日時点で確実な事を申し上げるには至っていない。[1]

1.これまでの経緯を振り返る

独からPWI提案

 2012年5月 
  ・東京会議:PWIの討議開始が承認された。

 2012年9月
  ・PWI改訂、その主要点:OPV/DSC双方が対象
  ・“Reliability”の標準が“Stability”の標準と改められる
  ・対象はセルのみ。モジュールは含まれない

 2012年10月 
  ・Milpitas会議:改定PWIをベースに討議
  ・改訂版の改訂点については、基本的には日本側での事前の考慮点と一致している。
  ・三菱化学 荒牧氏が有機系PV全般のプレゼン
  ・室内光から集光光までナノをベースにした全てのPVセルの安定性が対象
  ・2012年12月に向けてWeb会議を行う

 2012年12月 
  ・Web会議は行われず、NWIPが出され、3月20日までのコメント・投票に付された。
  ・NWIPはIS(国際標準)としてではなく、TS(技術仕様書)のプロジェクトとして出された。

 2013年3月
  ・日本からの回答・コメント:主として下記の考え方で“賛成”として回答。
  ・TSであれば、当面認証などの対象となる危険度が低い。
  ・TSとしてでも、部分的に詳細に決めすぎている部分があるので、これらの点については、今後討議されていくべきとのコメント付き
  ・認証に結びつくような記載や、OPV・DSCの一方のみに特化した事項に関する記載は削除されるべきとのコメント付き

 2013年4月末
  ・NWIPが有効となり審議が始まる為に必要な4ヶ国の参加に至っていない。
  ・参加:独、日、露 (米国はPWIの段階では参加していたが、今回は不参加に変えた)
  ・“不成立”として活動がここで終了するところではあるが、国際幹事はもう一か国の参加促しに自信を示している。

 2013年5月10日
  ・遅れていた第四ヶ国目からの表明があって、10日付けで文書が回付された。
  ・NWIP有効の為の第四ヶ国目は、カナダである。 但し、カナダからのExpertの名前を見ると、ナノ材料の言葉の定義に関与している人物であって、有機あるいはPVの専門家ではない。(5月11日記)

2.今後

 2013年5月 
  ・カナダの参加表明を受けて、ベルリンで会議は開催される。ただ、ロシアもカナダも本当の意味の専門家は現れないだろう。 実際には、プロジェクトリーダーのHauch氏の日本からの代表による文書のチェックになるだろう。   
  ・Hauchが今回初めて現れるので、IECでのプロジェクトの位置付け、ISOSとの関係など氏の考え方を表明してもらうつもりである。(5月11日記)

 2013年10月
  ・インドでの会議において有機PV関係が討議されるか否かは今の段階で議論するのは時期尚早である。今のStability のTS に加えて、日本から新たな提案を行うという方針に至れば、インドでの開催を積極的に求めていく事になるだろう。

 尚、PWI, 改定版PWI, NWIP文書を本稿の一部としてコピーして掲載する事は差し控えるものの、内容にご興味ある方には個々にお送りさせて頂きます。

3. 以下、2012年10月のミルピタス会議の報告を載せる。

IEC TC113 ミルピタス会議(米国)出張報告
2012年10月、IEC TC113(ナノエレクトロニクス)の会議が米国ミルピタス(シリコンバレー)にて開催されました。この会議の中の有機系太陽電池標準のセッションにゲストとして参加致しました。

IEC TC113会議

1.概要

開催場所 米国 ミルピタス
開催日 2012年10月15日~19日 有機系太陽電池標準化のセッション
16日。筆者はこのセッションのみに参加。
参加者 TC113への登録メンバー国から、関係Expertが参加。(有機系太陽電池のセッションのみに参加した為、詳細不明。)総勢 二十数名。
日本からは、ナノエレクトロニクス関係で5名、有機PV関係で三菱化学の荒牧氏。
筆者はTC113国際幹事のFabricius氏から直接のInvitationという事で、参加したので日本の立場を代表する役にはなかった。
有機太陽電池関係者:本プロジェクトのリーダーである独のHauch氏は欠席。本分野の関係者は三菱化学の荒牧氏と筆者のみ。[2]

       
2.議事
プロジェクトリーダーのHauch氏が不在だったので、国際幹事のFabricius氏が実質、議論をリード。以下について討議が行われた。
1)三菱化学 荒牧氏の有機PVに関するプレゼン
2)PWI審議文書の審議

主要改訂点 ・有機薄膜PVとDSCが同等に扱われる事になった。
・Reliability の言葉が改められStabilityとなった。
・認証関連の記載を削除
・セルを対象とするものであり、モジュールは対象外。

 
3)全体的な質疑とこれからのスケジュール

主要な質疑: 室内光から集光光まで、Stability評価の対象となっているが、そういう事で良いか? → 了。
TC82(太陽光発電)の関係では、米国のTC82国内委員会はTC113の有機PVの活動に反対している。一方、ドイツのTC82国内委員会はTC113の活動を Enthusiastic と見ている。
・やはり今回、プロジェクトリーダーのHauch氏が不在であるのはよろしくない。独の中でどの程度コンセンサスがとれているのかも良く分からない。是非、独国内での討議を深めてもらいたい。
・それを踏まえた上で、Web会議の開催をしてもらいたい。Web会議は11月末~12月。

寄稿-① EU PVSEC 2012 を訪問して

 昨年9月25日から10月1日の間、松山外志郎氏(東京大学先端研)とDSCの国際標準化の動向を探るため欧州各国を訪問した。その際、ドイツ国、フランクフルト市で開催中のEU PVSEC 2012に参加した。旅程の都合でこの国際会議には出席できず、併設の太陽電池国際展示会を1日だけ見学した。従って、「EU PVSEC 2012を訪問して」と表題をつけたが、DSC国際標準化の動向についても報告する。

写真(1) EU PVSEC 2012 会場内昼食風景
写真(1) EU PVSEC 2012 会場内昼食風景

 フランクフルト到着後、翌日、今回の主要訪問先であるIEC, TC113委員会幹事のProf. N.Fabricius (Karlsruher Inst. Tech., Germany)と面談し、IEC, TC113委員会にPWI(予備業務項目)として提出された“Reliability Assessment of Nano-Enabled Photovoltaics“について議論した。ここでの会見で、同氏からは、NanoEnabledPhotovoltaicsには、全ゆるナノ構造有機系太陽電池が含まれる事が示された。また、TC82とTC113との差別化は、前者がSi系を中心に全太陽電池の国際標準に対応しているのに対して、後者では電子デバイスの主要構成部分であるナノオーダー構造要素の性能・耐久性評価・標準化を取り扱う。換言すれば、前者はデバイスで纏めるのに対して後者は分野を越えたナノ技術という切り口で纏めたものである。このため、TC113では、製品認証までは行わないとDr. Fabriciusは明言した。

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分科会報告-③ 第一回用途開拓シンポジウム

 本年2月21日(木)に有機系太陽電池技術研究組合(RATO)主催による「第一回用途開拓シンポジウム」が、東京大学先端科学技術研究センター産学連携新エネルギー研究施設内のENEOSホールで開催されました。冒頭の金川理事長の挨拶にもありました、「色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率が13%[注1]に迫ってきており、使途に応じた市場の創生も重要である」という言葉どおり、産業界も用途開発や商品化を意識し始め、ビジネスマンを中心に95名の参加がありました。

 本シンポジウムの企画意図は、RATO組合員の皆様に有機系太陽電池の用途開拓を促進される一助となるよう、各界の第一人者の講師をお招きし太陽電池の市場動向からデザインや応用商品、メガソーラーまで太陽電池を取り巻く幅広い話題をご提供いただく機会の提供であります。有機系太陽電池に関わられている皆様に、用途開拓のヒントやビジネスインスピレーションを得ていただくことを目的に開催されたものであります。また、研究者にこそ用途開発を意識した研究をしてもらいたいとの思いから、大学・公的研究機関の関係者には、RATOの関わりの有無によらず無料で聴講できるようにしました。開かれたRATOの活動を皆様に知っていただくため、門戸を開放し組合員以外の方々も参加できるようにもしました。講演の話題提供や講師選定は、事前に組合員の皆様からアンケートを募り、時間の関係と話題が重複しないよう配慮し4題とさせていただきました。

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分科会報告-② ICES2013

 2013年1月26-28日にかけて蔵王を会場に有機系太陽電池の計測及び評価国際会議 International Conference on the Evaluation & Standardization of Organic Solar Cells (ICES2013) を開催しました。海外はスイス・スペイン・アメリカ・スウェーデン・韓国・中国・台湾から9名の招待講演者を迎え、国内の招待講演者も含めて総計51名の参加を得ました。
 幸い天気にも恵まれ、冬シーズンのリゾート地ということもあって、かつ、ご出席頂いた皆様方の温かい御支援と御協力の下に無事淡々とスケジュール通り会議を終えることができました。改めて関係各者に感謝申し上げます。

 今回の会議では太陽電池分野の第一戦で活躍されている著名な先生方の出席を頂き、以下の3件の基調講演を頂きました。

(1)産総研太陽光発電センターの近藤道雄先生からは太陽光発電の普及拡大にはモジュール効率が12%以上必要である話や、そのための技術革新について概説頂き、材料の組み合わせに制約のない有機系太陽電池は有望である旨をお話頂きました。

(2)瀬川浩司先生からは色素増感太陽電池研究者の最近の関心事であるルテニウム錯体 Dye-X を始めとする最近の成果について御披露頂きました。

(3)グレッツェル先生からはサプライズとして新規なポルフィリン色素SM315を用いて色素増感太陽電池では初めて効率13%台を記録した話を御報告頂きました。色素は既知のYD2-o-C8を基本骨格としてドナーとアクセプター部位を改良したもので、波長感度域が(700nm→)800nmと長いのが特徴です。

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分科会報告-① 材料・セル・製造プロセスの開発設計分科会 有機系太陽電池ワークショップ ~酸化チタンの基礎化学と応用~

文:久保 貴哉(東京大学先端科学技術研究センター 附属産学連携新エネルギー研究施設 特任教授)

有機系太陽電池技術研究組合(RATO)では、有機系太陽電池を構成する様々な材料の基礎と応用、さらには太陽電池評価技術など有機系太陽電池の研究開発を進める上で有益な科学技術について幅広く解説する講習会として、「有機系太陽電池ワークショップ」を開催しています。第1回は材料セル・製造プロセスの開発設計分科会が中心となり、色素増感太陽電池や有機無機ハイブリッド太陽電池の高性能化において、重要な構成素材の一つである酸化チタンを取り上げ、2012年12月12日(水)に東京大学駒場リサーチキャンパス(ENEOSホール)にて、ワークショップ―酸化チタンの基礎化学と応用―を開催しました。本ワークショップには、RATO組合員から約30名、大学院生など非組合員からも多くの受講を頂きました。なお、「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)-低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発」との共催により実施しました。
 

開会の挨拶(金川哲夫前理事長)

 本ワークショップは、金川哲夫RATO理事長(当時)より、太陽電池の研究開発を取り巻く環境や、有機系太陽電池の実用化の重要性などの開会挨拶に引き続き、酸化チタンの基礎科学と応用について、第一線でご活躍の先生方に講義をして頂きました。

 講座プログラムは以下の通りです。

 理論計算化学による酸化チタンの基礎科学…東京大学 山下晃一先生
 酸化チタンの基礎物性と機能性………………北海道大学 大谷文章先生
 酸化チタン表面特性と塗布技術………………御国色素 瓦家正英先生
 酸化チタンの光機能デバイスへの応用………東京大学 内田聡先生

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RATO新理事長 田中 千秋氏 インタビュー

RATO 理事長 田中千秋 氏

― 新理事長就任に当たっての抱負をお聞かせください。

田中:地球環境とエネルギー問題は地球が抱える最重要課題ですので、その問題に取り組む組合の理事長就任は身の引き締まる思いです。金川前理事長の熱い思いを引き継いで、実用化への道筋をしっかり立てていくことが私に課せられた使命であると思っています。RATO(有機系太陽電池技術研究組合)の趣旨として、組合に参加する企業がどうやって結合してやっていくのかが重要です。それをうまく取りまとめ、皆さんの力を引き出していくのが私の役目です。夢と期待は大きいのですが、一方で課題も多く抱えていますので、世界に先駆けて有機系太陽電池の商品開発を加速するためにしっかり取り組んでいきたいと思っております。

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