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- RATO News vol.02
理事長退任に当たって 金川 哲夫 (RATO前理事長)
平成22年6月第1回有機系太陽電池技術研究組合(RATO)設立準備会を開催してから既に3年が経ちました。神話に出てくる日本の国造りと同様なかなか固まらず、平成24年2月22日経産省から認可されるまでの道程が大変でした。
しかし発足してからのRATOは、20年の歴史をお持ちの太陽光発電技術研究組合(PVTEC)を見習いながら緩やかではありますが前進を続けています。設立時の挨拶に「有機系太陽電池で日本が世界における存在感を示すためには技術面でも用途面でも常に先頭を走っている必要があり、その為にはオールジャパン体制が必要だ」と掲げたことをご記憶だと思います。オールジャパン体制が必要になるのはもう少し先のことであり、私の在任中には具体化しませんでしたが、設定した目標を反故にしないよう努力してきました。
現時点での問題は、これなら市場の評価に耐えうるという有機系太陽電池が未だ世の中に出せないことです。色素増感太陽電池(DSC)に続き、有機薄膜太陽電池(OPV)でも変換効率が大巾に改善され実用化試験が始まりつつあります。DSCでは、昨年来有機無機ペロブスカイトなどの考案により変換効率と耐久性の改善が期待できるようになりました。更に面白いことに全く別の原理で作動するDSCとOPVですが、お互いに長所を取り入れ電池の構造や材料が接近してきたことです。
従ってここ2、3年の内には、市場の評価に挑戦出来る有機系太陽電池は必ず姿を現すものと確信しています。しかし気を付けたいのは自社の技術を過信して独走し始めると、以前フラットパネルディスプレイや半導体などで遭遇したように海外のメーカーに足を掬われる可能性が高いと思います。
ここで効果を発揮するのがオールジャパン体制です。
RATOの各社が知恵を出し合って有機系太陽電池を永続性のある商品とするため、ハード面だけではなくシステム・サービス面を含め総合的な戦略戦術を検討し海外メーカーへの対抗手段を事前に講じておくことで優位性を維持すると共に低炭素社会に向けて貢献していきたいと考えています。
競争の激しくなる将来に備え、来年傘寿になる私よりも若くて実績と行動力のある東レ相談役の田中千秋氏様に理事長を引き受けて頂いた次第です。私ももう暫く理事として頑張る所存ですのでご支援の程をお願いします。